介護施設での床ずれと転落事故：89歳のお祖母様の安全を守るために私たちができること
介護施設での床ずれと転落事故：89歳のお祖母様の安全を守るために私たちができること
この記事では、介護施設に入居されている89歳のお祖母様の床ずれと転落事故に関するご相談について、具体的な対策とアドバイスを提供します。介護の現場で働く方々や、ご家族が抱える不安を軽減し、安心して日々の生活を送れるようサポートすることを目的としています。
89歳の祖母のことです。認知症（要介護度4）で施設に入居しています。4か月程前に左大腿骨頸部骨折をしてしまい、その後手術を受けて再び施設に戻りました。今は車椅子かベッドで横になるかの生活です。2か月程前には突然右手首がだらりと折れ曲がったまま動かせなくなり、病院（整形外科）でレントゲンを撮ったところ、右手の小指の古い骨折は見つかりましたが、右手首は骨折しておらず、だらんとした原因はわからないとのことでした。
そのような状況で今、相談したいことが二つあります。
①車椅子とベッドでの生活のためか、尾骨周辺が直径7～8㎝位（円形状）の大きさで糜爛しています。施設の担当医の指示により、炎症を抑えるクリームを介護士さんが指で直接塗っています。（その上には何もしていません）床ずれがひどくなってしまった理由を介護士さんに尋ねましたが、祖母はかなり痩せてような状態なので悪化しやすいとの返答しかありませんでした。これ以上床ずれが悪化しないために、何か効果のある薬や治療法などはないでしょうか。2，3時間おきの体位交換はしているようです。
②昨日のことです。お昼の食後、祖母はベッドに寝かされていたのですが、その2時間後に介護士さんが部屋に行くと、祖母がベッドから落ちて倒れている状態だったようです。ベッドに柵はしてあったとの話ですが、どのように落ちてしまったのかわかりません。落ち方によっては頭を打ったり再び骨折する恐れもあるので心配です。そのようにならないために、どのように対策をすれば良いでしょうか。（祖母は認知症で自ら訴えることができません）
床ずれ（褥瘡）の悪化を防ぐための対策
床ずれは、長期間の圧迫によって皮膚や組織が損傷する状態です。特に高齢者や寝たきりの方、栄養状態が悪い方はリスクが高まります。お祖母様の場合、車椅子やベッドでの生活、痩せていること、そして認知症であることから、床ずれのリスクが非常に高い状態です。以下に、床ずれの悪化を防ぐための具体的な対策を説明します。
1. 適切な体位変換
2～3時間おきの体位変換は、床ずれ予防の基本です。しかし、体位変換の頻度だけでなく、その方法も重要です。
- 体位変換の記録：体位変換の際に、日付、時間、体位（仰向け、右向き、左向きなど）を記録し、記録をスタッフ間で共有することで、体位変換の抜け漏れを防ぎます。
- 体圧分散：体位変換時には、体圧分散効果のあるクッションや体位変換パッドを使用しましょう。特に、仙骨部（尾骨周辺）、肩甲骨、踵（かかと）など、骨突出部への圧迫を軽減することが重要です。
- 姿勢の確認：体位変換後も、皮膚の状態を観察し、赤みや圧迫の痕がないか確認しましょう。
2. スキンケア
皮膚の清潔と保湿は、床ずれ予防の基本です。
- 皮膚の清潔：入浴時や清拭時に、皮膚を優しく洗い、清潔に保ちます。石鹸を使用する場合は、刺激の少ないものを選びましょう。
- 保湿：入浴後や清拭後には、保湿剤を塗布し、皮膚の乾燥を防ぎます。保湿剤は、皮膚のバリア機能を高め、外部からの刺激から皮膚を守ります。
- クリームの塗布方法：担当医の指示に従い、適切なクリームを塗布します。指で直接塗るのではなく、清潔な手袋やガーゼを使用して塗布することで、感染のリスクを減らすことができます。
3. 栄養管理
栄養状態は、床ずれの治癒に大きく影響します。栄養不足は、皮膚の再生能力を低下させ、床ずれを悪化させる原因となります。
- 栄養評価：医師や管理栄養士による栄養評価を受け、適切な栄養摂取量を決定します。
- 高タンパク質の摂取：皮膚の再生には、タンパク質が不可欠です。肉、魚、卵、大豆製品など、高タンパク質の食品を積極的に摂取しましょう。
- ビタミンとミネラルの補給：ビタミンA、ビタミンC、亜鉛などは、皮膚の健康を維持するために重要です。必要に応じて、サプリメントの利用も検討しましょう。
- 水分補給：脱水は皮膚の乾燥を招き、床ずれのリスクを高めます。こまめな水分補給を心がけましょう。
4. 専門的な治療
床ずれが悪化している場合は、専門的な治療が必要となります。
- 医師の診察：床ずれの状態を医師に診察してもらい、適切な治療法を決定します。
- 創傷被覆材：床ずれの程度に応じて、創傷被覆材（ドレッシング材）を使用します。創傷被覆材には、湿潤環境を保ち、治癒を促進する効果があります。
- 薬物療法：感染がある場合は、抗生物質を使用することがあります。
- 外科的治療：重度の床ずれの場合、外科手術が必要となることもあります。
転落事故を防ぐための対策
認知症のお祖母様がベッドから転落されたとのこと、ご家族としては大変心配な状況です。転落事故は、骨折や頭部外傷など、重篤な結果を招く可能性があります。転落事故を防ぐために、以下の対策を講じましょう。
1. ベッドの安全対策
ベッドからの転落を防ぐためには、まずベッド自体の安全対策を見直しましょう。
- ベッド柵の設置：ベッド柵は、転落防止の基本です。ただし、ベッド柵の高さや隙間、設置方法によっては、かえって危険を招くこともあります。
- 適切な高さと隙間：ベッド柵は、利用者の身長や体の大きさに合わせて、適切な高さのものを選びましょう。ベッド柵とマットレスの隙間は、10cm以下にすることが推奨されています。
- 柵の形状：柵の形状も重要です。隙間が大きかったり、手足が挟まりやすい形状のものは避けましょう。
- 設置方法：ベッド柵は、正しく設置されているか確認しましょう。
- ベッドの高さ調整：ベッドの高さを低くすることで、転落時の衝撃を軽減できます。
- センサーの設置：ベッドから離れるとアラームが鳴るセンサーや、ベッドからの離床を感知するセンサーを設置することも有効です。
2. 環境整備
ベッド周辺の環境を整えることで、転落のリスクを減らすことができます。
- 周囲の整理整頓：ベッド周辺には、つまずきやすいもの（コード、スリッパなど）を置かないようにしましょう。
- 照明：夜間は、足元を照らす照明を設置し、視認性を高めましょう。
- 床材：床には、衝撃を吸収するクッション性のある素材（クッションフロアなど）を使用することも有効です。
3. 見守り体制の強化
認知症の方は、転落のリスクが高いため、見守り体制を強化することが重要です。
- 定期的な巡回：介護士による定期的な巡回を行い、利用者の状態を観察しましょう。
- 夜間の見守り：夜間は、特に転落のリスクが高まります。夜勤のスタッフによる見守り体制を強化しましょう。
- 行動パターンの把握：利用者の行動パターンを把握し、転落のリスクが高い時間帯や行動を特定し、重点的に見守りましょう。
4. 身体拘束の原則
転落防止のために、身体拘束を行うことは、原則として避けるべきです。身体拘束は、利用者の尊厳を損ない、精神的な負担を与える可能性があります。身体拘束を行う場合は、以下の点に注意しましょう。
- やむを得ない場合：身体拘束は、他の方法では転落を防ぐことができない場合に限り、やむを得ず行われるべきです。
- 医師の指示：身体拘束を行う場合は、医師の指示が必要です。
- 家族への説明と同意：身体拘束を行う前に、家族に説明し、同意を得る必要があります。
- 記録：身体拘束を行った時間、理由、方法などを記録し、定期的に見直しを行いましょう。
5. 認知症ケアの専門知識
認知症の方の転落事故を防ぐためには、認知症ケアに関する専門知識が不可欠です。
- 認知症の理解：認知症の症状や行動特性を理解し、利用者の状態に合わせたケアを提供しましょう。
- コミュニケーション：言葉によるコミュニケーションが難しい場合でも、表情や身振り、手振りなどを用いて、コミュニケーションを図りましょう。
- 環境調整：認知症の方にとって、安全で安心できる環境を整えることが重要です。
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施設との連携
床ずれや転落事故を防ぐためには、施設との連携が不可欠です。
- 情報共有：お祖母様の状態や、これまでの経過について、施設と積極的に情報共有を行いましょう。
- 相談：疑問や不安なことがあれば、遠慮なく施設に相談しましょう。
- 連携：施設と協力し、お祖母様の安全を守るための対策を講じましょう。
まとめ
89歳のお祖母様の床ずれと転落事故に関するご相談について、具体的な対策を提示しました。床ずれの悪化を防ぐためには、適切な体位変換、スキンケア、栄養管理、専門的な治療が重要です。転落事故を防ぐためには、ベッドの安全対策、環境整備、見守り体制の強化、認知症ケアの専門知識が不可欠です。施設との連携を密にし、お祖母様の安全を守りましょう。
介護は、大変なことも多いですが、愛情と適切なケアがあれば、お祖母様は安心して生活を送ることができます。この記事が、少しでもお役に立てれば幸いです。
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