「家に帰りたい」認知症利用者の対応：介護施設職員が抱えるジレンマと解決策
「家に帰りたい」認知症利用者の対応：介護施設職員が抱えるジレンマと解決策
この記事では、認知症対応型通所介護施設で働くあなたが直面している、利用者様の「家に帰りたい」という強い思いへの対応について、具体的なアドバイスと解決策を提示します。長年、介護の現場で培ってきた経験と、専門的な知識を基に、利用者様とご家族、そしてあなた自身がより良い関係を築けるよう、サポートしていきます。
頻回に徘徊する認知症のご利用者への対応に苦慮しています。通所は本人の希望でなく、来所してもすぐに「家に帰る」と言って出て行きます。どのような対応がこの利用者様にとってよいのか悩んでいます。
認知症対応型通所介護施設に勤務しています。
来所されても、お茶を飲まれるとバイタルチェックもままならず、すぐに「（家に）帰る」と言って出て行きます。ご本人の好きだったというスポーツや趣味を利用して、卓球や写真、ドライブ、足湯、マッサージなどをしたりしながら居心地のよい空間づくりをめざし１年が経過しましたが、いまだ落ち着いてくれません。書写が得意であることもわかり、掲示物や案内を書いてもらい役割を持ってもらうこともしましたが、しばらくすると飽きてしまい、施設から出て行ってしまいます。
元々寡黙な方で、こちらかかは話しかけても９９％近くは無視、何かの拍子に返事をされることもあります。しつこかったり、思い通りにならないと激昂することもあります。
職員が必ず１人つくようにして、徘徊（といっても家に帰るという目的ははっきりしているのですが）につきそったり、マッサージをしたり、ドライブに連れて行ったりしています。徘徊では、うまく戻ってくることもありますが、大概は疲れるころを見計らって声掛けし、車で迎えにきてもらいます。車がくると、ほっとしたように乗り込みます。そしてデイに戻るとまたすぐに出て行きます。
冷静に考えると、家にいると落ち着くことが多いので、無理にデイを利用されなくても、と思えることもあります。
現在は迎えにいくとコタツに入ってテレビを見ていることが多く、送迎車に乗ることを拒否することも多いです。ドライブは好きなのでドライブに誘い、ようやく送迎車に乗っていただきお連れするのですが、センターに着くとすぐに帰りたがる状態・・・・家人によると、家に居ても外に出て行くことがあるから心配だと言われるが、家のほうがよほど落ち着いています。無理にデイに連れてこなくとも、自宅に居てヘルパーがデイ利用時間に見守りをするほうが、本人にとってより幸せではないかとも思います。
なぜ家だと落ち着くのか考え、おなじようなコタツを用意したり、掛物を掛けたり、本を用意したり、TVをセットしましたが、なかなか決定打にはなりません。
長い文章ですみませんが、ここまでお読みいただき、このご利用者様にとって、家に居た上で家族が安心する方法を見つけるのがよいのか。または、家族の希望通りにデイにお連れして、なんとかくつろげる環境作りを継続するのがよいのか。ご意見をいただきたいです。
また、勤務先で、こうした利用者様がいらして、こんな方法、考え方で接したら上手くいった等の経験があったらぜひ教えてくださいませ。
はじめに：なぜ「家に帰りたい」のか？
認知症の方々が「家に帰りたい」と訴える背景には、様々な要因が考えられます。それは、単に「今の場所に居たくない」という感情だけでなく、過去の記憶や安心感、そして現在の状況に対する不安などが複雑に絡み合っているからです。この根本的な原因を理解することが、適切な対応への第一歩となります。
- 過去の記憶： 過去に過ごした家への愛着や、そこで得た安心感。
- 現在の不安： 新しい環境への適応の難しさ、見慣れない人たちへの警戒心。
- 身体的な不調： 体調不良や不快感。
- 認知機能の低下： 時間や場所の認識能力の低下。
これらの要因を考慮し、利用者様の個々の状況に合わせた対応をすることが重要です。
解決策1：環境調整とパーソナルケア
利用者様が「家に帰りたい」という気持ちを和らげるためには、まず、施設内の環境を調整し、パーソナルケアを徹底することが重要です。具体的には、以下の点を意識しましょう。
1. 施設の環境を「家」に近づける
- 馴染みのある家具： ご自宅で使用していた家具や、似た雰囲気のものを配置する。
- 写真や思い出の品： ご本人の写真や、趣味に関するものを飾ることで、安心感を与える。
- 生活リズムの尊重： ご本人の生活リズムに合わせたケアを提供する。
2. 個別対応とコミュニケーション
- 傾聴： 利用者様の言葉に耳を傾け、気持ちを理解しようと努める。
- 共感： 「家に帰りたい」という気持ちに共感し、安心感を与える。
- 声かけ： 穏やかな口調で、安心できる声かけを心がける。
3. 身体的ケアの徹底
- バイタルチェック： 定期的な健康チェックを行い、体調の変化に気づく。
- 快適な空間： 室温や湿度を適切に保ち、快適な空間を提供する。
- 食事： 食べやすい食事を提供し、水分補給を促す。
解決策2：家族との連携強化
利用者様のケアにおいて、ご家族との連携は不可欠です。ご家族との情報共有を密にし、協力体制を築くことで、より効果的なケアを提供することができます。
1. 情報共有の徹底
- 日々の様子： 利用者様の施設での様子を、ご家族に詳しく伝える。
- 変化の共有： 体調や行動の変化について、速やかに連絡する。
- 相談： ケアに関する疑問や不安を、ご家族と共有し、共に解決策を探る。
2. 家族の意見の尊重
- 要望の聞き取り： ご家族の要望を丁寧に聞き取り、ケアに反映させる。
- 情報提供： 認知症に関する情報や、ケアの方法について、積極的に提供する。
- 面会： 定期的な面会を設定し、ご家族との関係を深める。
3. 家族へのサポート
- 相談窓口： ご家族が抱える悩みや不安を相談できる窓口を設ける。
- 情報交換の場： 同じような状況のご家族同士が交流できる場を提供する。
- レスパイトケア： ご家族の負担を軽減するために、レスパイトケアの利用を勧める。
解決策3：個別ケアプランの見直しと柔軟な対応
利用者様の状態は常に変化します。そのため、定期的にケアプランを見直し、柔軟に対応することが重要です。
1. ケアプランの定期的な見直し
- 評価： 定期的に利用者様の状態を評価し、ケアプランの効果を検証する。
- 変更： 状態の変化に合わせて、ケアプランを柔軟に変更する。
- 目標設定： 利用者様の目標を明確にし、達成に向けたケアを提供する。
2. 柔軟な対応
- 例外対応： ケアプランに固執せず、状況に応じて柔軟に対応する。
- 試行錯誤： 様々な方法を試し、効果的なケアを探る。
- チームワーク： チーム全体で情報を共有し、協力してケアを提供する。
3. 専門家との連携
- 医師： 定期的な診察を受け、健康状態を把握する。
- 専門職： 認知症ケアに関する専門家（医師、看護師、作業療法士など）と連携し、アドバイスを受ける。
- 地域資源： 地域包括支援センターや、その他の地域資源を活用する。
成功事例：具体的な対応例
以下に、実際に効果があった対応例をいくつかご紹介します。これらの事例を参考に、ご自身の施設でも取り入れられる方法がないか検討してみてください。
事例1：馴染みの音楽を活用
ある利用者様は、施設に来るとすぐに「家に帰りたい」と訴えていました。そこで、ご本人が若い頃に好きだった音楽を流してみたところ、落ち着いて過ごせる時間が増えました。音楽に合わせて一緒に歌ったり、踊ったりすることで、笑顔が見られるようになり、施設での生活に慣れていくことができました。
事例2：役割と達成感の提供
別の利用者様は、書道が得意でした。そこで、施設の掲示物や、イベントの案内などを書いてもらう役割を与えました。最初は「面倒くさい」と言っていたものの、完成した作品を他の利用者様や職員が褒めることで、達成感を得て、積極的に取り組むようになりました。自分の居場所があると感じ、施設での生活に意欲を持つようになりました。
事例3：家族との協同での環境調整
ある利用者様は、自宅での生活を希望していました。そこで、ご家族と協力し、施設内に自宅のリビングルームを再現する試みを行いました。馴染みの家具や、写真、趣味のものを持ち込み、自宅のような空間を作りました。その結果、施設でも落ち着いて過ごせる時間が増え、徐々に施設での生活に馴染んでいくことができました。
まとめ：より良いケアのために
認知症の方々の「家に帰りたい」という思いに応えるためには、環境調整、家族との連携、ケアプランの見直しなど、多角的なアプローチが必要です。それぞれの利用者様の個性や状況を理解し、寄り添いながら、最適なケアを提供することが重要です。そして、あなた自身も、日々のケアを通して学び、成長していくことが大切です。
今回のケースでは、ご自宅での生活と、デイサービスでの生活のバランスを模索していくことが重要です。ご本人の意思を尊重し、ご家族との連携を密にしながら、最適な方法を見つけていきましょう。
認知症ケアは、簡単ではありません。しかし、あなたの努力と工夫、そして温かい心遣いが、利用者様の笑顔につながります。
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